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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』をもっと楽しむための制作マル秘エピソード

2012.12.03 01:40|エヴァンゲリオン
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

■ストーリー『汎用ヒト型決戦兵器エヴァンゲリオンに乗ることで、自ら戦うことを選んだ碇シンジ。大きな運命を託された14歳の少年の物語は、未知の領域へ突入する…!綾波レイと人気を二分するヒロイン、アスカがエヴァンゲリオン2号機に乗って参戦。加えて魅惑の新ヒロインが登場する。謎の生命体“使徒”とEVAシリーズの戦いは新エヴァンゲリオンの参加で、さらに激しくエスカレート。スクリーンに続々と展開する、誰も見たことのないバトルシーン。驚異のスペクタクルの興奮は今、未知の物語へと加速する!
あえてTVシリーズと同じ出発点からスタートしてみせた新EVA伝説。第2ステージからは、大きくポイントが切りかわっていく。そこから見えてくる全4部作の真の姿とは、はたして何なのか?新キャラ・新エヴァなどの斬新な要素だけではなく、未知の展開に対応したデジタル時代のエヴァ映像も「破」の大きな見どころ。物語・映像の両面から、「序」で再構築されたはずのあらゆる事象は土台を失っていったん倒壊し、新劇場版は混沌の中から《未来》に向けて刷新されていく。それはまさにエヴァだけが可能とする行先不明の《ライブ感覚》。いま、大転換のための幕が上がる!押し寄せる戦慄の感覚!震えるほどのエモーション!それこそがまさに「破」なのであるッ!』


というわけで、本日は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の制作にまつわる裏話的なエピソードを書いてみたいと思います。

『新劇場版:序』の時は作画の修正やエピソードの組み替えなどに止まり、ストーリー展開的にはそれほど大きな変更は見られなかった。しかし、今回の『破』では登場人物の設定変更はもちろん、新キャラや新エピソードの導入など、物語そのものに大幅な変化が加えられている。明らかに、「今までとは全く違う着地点」を目指して進行しているのだ。当初は庵野秀明総監督もここまで大胆に変更する予定ではなかったらしいのだが、『序』を公開した後の反応があまりにも良かったため、「じゃあ、もうちょっとサービスしちゃおうかな♪」と色気が出てきたらしい。

中でも一番大きく変更されたのが、新キャラの真希波・マリ・イラストリアスだという。鶴巻監督によると、マリはもともと新劇場版をアピールするためだけに作られた軽いキャラで、当初の脚本ではセリフも少なく、ストーリーに絡むこともほとんど無かったばかりか、「北極基地で死んでしまっても問題ない、ってぐらいの脇役だった」らしい。

ところが、『序』が予想以上の大ヒットになったため、突然庵野秀明が「もっとマリを活躍させよう!」と大幅な計画変更を宣言。鶴巻監督は当時の様子をこう語る。「脚本を変更することで当然のように登場シーンは増えていくんだけれど、それでもマリの印象は薄いままだったし、キャラの特徴や性格さえはっきりしないままだったんですよね」

「仮設5号機に乗って戦うシーンでさえ、最初はもっとおとなしくて、”365歩のマーチ”も無いし、戦闘を楽しむキャラクター性も与えられていなかった。当然、それじゃストーリーは変わっていかないですし、マリが活躍しているとも言い難いわけです。しかも、実際にストーリーを変えようとすると、あちこちに齟齬が出てきちゃう。そこを修正するために、更に大きな修正が必要になったりして…。本当に、何度も何度も脚本を書き直していました」

作品の完成度を高めるため、頑張ってストーリーを書き換えた庵野秀明。だが、迷惑を被ったのは絵コンテを担当した樋口真嗣である。実は「破」の絵コンテはかなり早い段階から作業に入っており、なんと「序」が公開される前には完成していたというのだ(「序」と「破」の制作はほぼ同時進行だったらしい)。

出来上がった「破」のコンテを庵野に渡した後、樋口監督は『隠し砦の三悪人』の撮影に突入する。撮影の業務に忙殺され、やがて絵コンテのことなどすっかり失念。ところが、それから約1年後に招かれた「エヴァ新劇場版:序」の完成記念慰安旅行(沖縄)の席上で、庵野秀明から衝撃の事実を告げられる。

庵野:「あのさ…、悪いんだけど”破”の絵コンテを描いてくれないかな…」
樋口:「え?1年前に渡したじゃないですか?」
庵野:「いや…実はあの後脚本を大幅に書き換えちゃって…
    樋口の描いたコンテが使えなくなっちゃったんだよね」
樋口:「えええ!!!???」


樋口真嗣が驚くのも無理はない。なぜなら、こんなことは通常では有り得ないからだ。普通、アニメの絵コンテは脚本に従って描かれるため、準備段階で徹底的に打合せを行い、2稿3稿とリテイクを重ね、さんざん推敲した上でようやく”最終完成型”としてのシナリオが絵コンテ担当者に渡される(宮崎駿みたいにいきなり絵コンテから入る監督もいるが例外)。

その脚本に沿って描かれた絵コンテは(多少の直しが入る場合はあるものの)”決定稿”となり、各スタッフに配られるのだ。つまり、出来上がった絵コンテを更に大きく修正するなどということは、基本的には起こり得ないのである。

作画監督の松原秀典も、『新劇場版』の異常な制作スタイルに驚きを隠せない様子。「カラーの現場はとにかく特殊で、フィルムに定着するまで答えが出て来ないんです。シナリオ決定→絵コンテ決定→レイアウト決定→作画決定ときたら、普通はすべて決定なんですよ。それが、絵コンテにOKが出た後でもまた差し戻して直していたりするし、レイアウトもコンテにないものがたくさん上がっていたり、急に欠番になったり増えたりと全く油断できない感じ(笑)。絵コンテに空白があって、そこを庵野さんがずっとやっていたりとかね。そんなアニメの作り方をしているところは、絶対に他ではないと思いますよ」

しかも、絵コンテが配布された時点で実作業に入るという事は、既にかなりの分量が作画されていたということだ(なんせ1年も経っているのだから)。使い回しできるシーンはいいとしても、脚本が変わったために使えなくなったシーンも結構多いハズ。実際、鶴巻監督も「ミサトとシンジの別れのシーンとか、あれは恐らく6回ぐらい描き直してますね」などと述べており、ヘタすると億単位の無駄な作業費が発生している可能性もある。

通常の映画製作であればプロデューサーの首が飛んでもおかしくないほどの非常事態だが、そんなことが可能なのも、今回の新劇場版が映画会社主導ではなく、庵野秀明が自分で資金を調達しているからなのだ。自分で会社(スタジオカラー)を立ち上げて金を集め、自分で映画を作る、いわば”自主制作映画”のスタイルだからこそ成せるワザなのである。

元々、庵野秀明は学生時代から自主制作映画を作っており、会社のシステムが自分のスタイルに合わないことを以前から自覚していた。旧エヴァを作った時も、スポンサーや会社側から色々と注文を付けられるのが嫌で嫌で仕方が無かったらしい。そこで今回は、版権その他エヴァに関するあらゆる権利を手中に収め、映画制作を完全にコントロールできる環境を手に入れたのである(宣伝もカラーが行っているため、事前情報が極端に少ないのは困った問題だが)。

というわけで、史上最強の自主制作アニメとして生まれ変わった『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』は、アマチュアリズムを継承しつつも、サービス精神に溢れるバランスの良い映画に仕上がっていると思う。TVシリーズの総集編的な位置付けから出発した『序』は、続く『破』で大きな転換点を迎え、最新作の『Q』によって、更なる”未知の領域”へ突入する。そして4部作の完結編となる『シン・エヴァンゲリオン』ではどんなクライマックスが待ち受けているのか?どんな奇跡を我々に見せてくれるのか?いよいよその全貌が明らかになる!

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テーマ:ヱヴァンゲリヲン新劇場版
ジャンル:アニメ・コミック

タグ:ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

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