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「タイプ・あ~る」と申します。大好きなアニメや劇場作品について色々書いています。ご意見・ご要望等がありましたらお気軽にコメントしてくださいませ。

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片渕須直監督『この世界の片隅に』感想

2016.12.15 15:36|劇場アニメ
この世界の片隅に (1)

■あらすじ『1944年(昭和19年)2月。絵を描くことが好きな18歳のすずは、急に縁談話が持ち上がり、広島市から海軍の街・呉へやって来た。夫となる北條周作は海軍で働く文官で、幼い頃に出会ったすずのことが忘れられずにいたという。こうして北條家に温かく迎えられたすずは、見知らぬ土地での生活に戸惑いつつも、健気に嫁としての仕事をこなしていった。やがて戦況が悪化し、配給物資が次第に減っていく中でも、すずは様々な工夫で苦しい日々を懸命に乗り越えてゆく。しかし、運命の日”8月6日”は刻々と近付いていた…。こうの史代の傑作漫画を「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督が丁寧な日常描写の積み重ねで見事に描き切った珠玉の感動作!』



もう既に公開から1ヶ月が経過しちゃってるんですけど、ようやく『この世界の片隅に』を観て来ました。いや~、以前から「観たい観たい」と思いながらもタイミングが合わず、なかなか観に行けなかったんですよね。

なんせ上映館数が全国でわずか63館という、非常に小規模な態勢でスタートした本作。幸いにも僕の住んでいる地域では1館だけ上映してたんですが、午前と午後で1回ずつしか上映してなかったため、ちょっと時間が合わなかったんですよねえ。

ところが、興行成績ランキングで10位に入った後、上映館数が82に増え、それに伴って観客動員数も増加し、公開3週目でなんと6位にランクアップ!週末2日間で動員4万4048人、興収6494万9160円を記録し、前週の興収比114%と右肩上がりに業績が上昇し始めたのですよ。

このヒットを受けて各種媒体での紹介が相次ぎ、SNSでも盛り上がって満席の劇場が続出。さらに公開4週目にして第4位に食い込むという快挙を成し遂げ、上映スクリーン数は87に拡大、累計観客動員数は32万人、累計興行収入も4億5千万円を突破!この勢いは現在もアップし続けており、異例のロングランになりそうです。

そして普通なら公開から1ヶ月も経てば、スクリーンの大きさや劇場のキャパシティは減少していくものなのに、本作の場合は逆に増加し、とうとう1日の上映回数まで増えてしまいました。おお、やった!これで観に行ける!というわけで、ようやく鑑賞してきた次第です(^_^)

さてこの映画、公開直後から映画ファンの間で話題となり、観客の評価も「素晴らしい作品だ」「感動したッ!」などと絶賛の嵐。さらに映画評論家もほぼ褒めまくり状態で、キネマ旬報の採点ではなんとオール満点5つ星を達成するなど、もの凄く評判がいいんですよ(滅多に出ないキネ旬の5つ星↓)。

この世界の片隅に (3)

ではいったい、どんな映画なのかというと……「主人公すずの日常を淡々と描いた普通の映画」でした。「え~?なんだよソレ、全然面白くなさそうじゃん!」と思った人、ちょっと待って下さい。本作は、「戦時中の日常風景を詳しく丁寧に描いている」という点において、他に類を見ないほど画期的なアニメなのですよ。

もちろん、日本の戦時中の様子を描いた映画は過去にいくつも存在しています。しかし、本作を作った片渕須直監督は、「今までの戦争映画で描かれていた風景は正しくない。パターン化されていて古臭いものが多い」と考え、従来の戦争映画の常識を覆した、全く新しい戦争映画のビジュアルを生み出したのです。以下、片渕監督のコメントより。

みんなが今まで見ていた、記号化されてしまった71年前の世界はもう古臭いんですよ。『この世界の片隅に』では、戦時中を描いていてもこんなふうに物事を描くことができる、という新しいビジョンを提供したわけです。

”本当はこうだった”という世界を見てみたい、という気持ちの方が大きかった。いかにもパターン化された時代描写ではなく、本当は別の姿を持っていたということがわかる、その事自体が作品の魅力というか、興味を引くポイントになるだろうと思ったんです。



この”新しい戦争映画像”を作り出すため、片渕監督は自腹で夜行バスに乗って何十回も広島まで通い、取材を重ね、街を歩き、当時を知る人へのインタビューを繰り返しました(徹底的に一次資料を集めて、昭和18年から21年の生活を調べまくったらしい)。

こうした片渕監督のリアリティに対するこだわりは熾烈を極め、当時の風景を再現するため、膨大な資料や丁寧にロケハンした現地のデータを元に、店舗や家屋一軒一軒のレベルで調べ上げ、作品の画面へと落とし込んでいったのです。

例えば、すずが広島の街(中島本町)へ買い物に出かける冒頭シーンに一軒の散髪屋さんが映っているのですが、実はこれ、当時この場所で営業していた実在の理髪店なのですよ。片渕監督は取材の過程で濵井徳三さん(82歳)に出会い、爆心地に近い商店街で理髪店を営んでいたことを知りました。

疎開していた濵井さんは助かったものの、両親と兄弟はいまだに骨すら見つかっていないという。その話を聞いた片渕監督は、「単に町並みを再現するだけでは足りないかも…」と考えたそうです。そこで、濵井さんの家族と理髪店を映画に登場させることに決定。これを見た濵井さんは「凄いね。あれだけのものがよみがえってくるとは…。本当に嬉しかった、取り上げてもらうこと自体がね」と感激していたそうです。

また、画面の目立たないところに映っている主人公以外のキャラクター達(いわゆるモブシーン)に関しても、当時の広島で実際に生活していた人々の顔を調べて、わざわざモブキャラに反映させているとのこと。以下、片渕監督のコメントより。

広島には原爆戦没者慰霊施設というのがあって、原爆で亡くなった方の遺影を集めているんです。だから、中島本町のどこにどんな人がいて、どんな顔だったかが分かるんですよ。それを利用させてもらいました。実在していた方を登場させたからといって、そんなに労力をかけたわけではないです。でも、ちょっと自分達が行動すればそこに住んでおられた方のお顔が分かるのだから、その皆さんを描いたほうがいいと考えたんです。



う~む、何というこだわり!しかし、片渕監督のこだわりはこれだけではありません。例えば、戦争映画によく見られる窓を補強するための”テープの目張り”についても、当時の資料と照らし合わせて、実は太平洋戦争時にはあまり行われていないことを発見!そういった事実を踏まえ、そこにいる人々(キャラクター)の生活を丹念に描き出していったのです。

さらには呉の街が、どんな順番でどの街区から建物疎開(空襲に備えて建物を壊し、防火帯を作ること)していったか、そして呉市の月ごとの食糧配給についても記録が残っているので、「この月は何が配給されて、何が配給されなかった」などということも、全て記録を調べ上げて完璧に再現したらしい。

中でも僕が一番びっくりしたのが、飛来した米軍の戦闘機を狙って軍艦が高角砲を撃つシーンで、爆発した煙が青や赤などカラフルな色になってるんですよ。一瞬「アニメならではの演出なのかな?」と思ったんですが、実際に軍艦が撃つ高角砲の弾には、どの艦が撃ったかを識別しやすくするための着色弾が混ざっていたらしい。そ、そうだったのか!

この世界の片隅に (2)

このように、調べうる限りの資料を調べ、出来るだけ正確なデータを投入していくことで、あの時代のリアリティを感じられるようにしていったという片渕監督。もちろん、「時代考証が正しい」ってことで言えば、高畑勲監督の『火垂るの墓』も優れた戦争アニメなんですよね。でも、『この世界の片隅に』の場合は、『火垂るの墓』みたいな写実的な絵ではなく、水彩画のようなマンガチックな絵でリアルな日常を描いている、という点が最大の特徴なのですよ。

体に比べて手足の比率が大きいホンワカしたキャラクターたちが、過酷な戦争状態の中で生活を営むというギャップの凄さ!いや、最初に見た時は「日本まんが昔話か?」と思いましたからね(笑)。それぐらい”戦争映画”ということを感じさせない優しい絵柄で、人々の暮らしぶりをとても穏やかに描いてるんです。

そして内容は、子供時代のすずが鉛筆を失くして短くなった鉛筆を丁寧に削りながら使ったりとか、お嫁に行った先から手紙を出そうと思ったら嫁いだ先の住所が分からず皆に呆れられるとか、「小さなエピソードの積み重ね」で物語が進んでいきます。

なので、いわゆる「戦争映画」と聞いて想像するような”過剰なドラマチックさ”はありません。この映画はあくまでも「普通の主婦であるすずさんの目から見た戦争」を描いているわけで、”何でもない日常の積み重ね”こそが、逆説的に戦争の愚かさや恐ろしさを際立たせる構造になっているのですよ。

そういう意味では、まさにこの絵柄でしか描けない画期的な戦争映画であり、過酷な環境の中でも決してユーモアを忘れない人々の姿を鮮やかに活写した、優しくて逞しいアニメーションだと感じました。まあ地味と言えば地味ですが、絵を描くのが好きな普通の女性が広島から呉に嫁ぎ戦時下を生きる、その雰囲気や空気感や臨場感をここまで丁寧に描き出した作品は前代未聞だと思います(^_^)

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