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「タイプ・あ~る」と申します。大好きなアニメや劇場作品について色々書いています。ご意見・ご要望等がありましたらお気軽にコメントしてくださいませ。

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『火垂るの墓』制作秘話

2013.08.23 14:14|高畑勲
火垂るの墓

■ストーリー『昭和20年の神戸。急な空襲で母が入院した14歳の清太と4歳の節子兄妹は、叔母のもとを頼りに訪れる。だがふたりの母が亡くなったのを機に叔母は彼らを邪険にしはじめ、清太は節子を連れて誰もいない防空壕へ。二人だけの自炊生活をはじめるのだが・・・。自らの体験をもとに書いた、野坂昭如の同名小説をアニメ映画化。戦争によって両親を失った幼い兄妹がたどる過酷な運命を描く』




本作は、『ナウシカ』や『ラピュタ』でプロデューサーを務めた高畑勲の、スタジオジブリにおける第一回監督作品です。公開当時は『となりのトトロ』と同時上映でしたが、『トトロ』の後にこれを見せられた子供たちは狂ったように泣き叫び、一緒に見たお母さんは顔面蒼白になるなど、劇場内はちょっとしたパニック状態となり、『はだしのゲン』をしのぐトラウマ作品として、いまだに語り草となっています。おまけに、『火垂るの墓』に足を引っ張られる形となった『トトロ』は劇場公開時にお客がさっぱり入らず、スタジオジブリ歴代映画の中で、過去最低の興行成績を記録。以来、『トトロ』と『火垂るの墓』は、「絶対にやってはいけない二本立て」として日本映画史に名を残す事になったのですよ、トホホ。

さて、高畑勲と言えば、『母をたずねて三千里』や『赤毛のアン』などいわゆる”名作アニメ”の人と思われていますが、その本質は映像表現の実験に挑戦し、常にアニメーションの可能性を広げてきた前衛精神にあるといえるでしょう。例えば、セルに傷をつける事によって”雨”を表現したり、瞳の中にハイライトを描き「潤んだ目」に見せるという手法は、高畑が初めて開発したと言われているし、そもそも「青年が自分の事のように感じられるシリアスなドラマをアニメで作る」という独特のスタイルもまた、高畑が切り開いてきた方法論なのです。しかし、その実験精神はあまりにも徹底的なため、時として常人には理解できない領域にまで突入してしまう事すらありました。

1999年6月29日、『ホーホケキョとなりの山田くん』の完成打ち上げパーティの席上で、集まった人々に対し高畑監督は、「この映画が当たろうが当たるまいが、例え観客が一人も来なくたって、アニメーションの表現上は成功したと思います!」と語ったことは有名です。それを聞いていた参加者達はポカーン状態。商業映画なのに”当たろうが当たるまいが”なんてメチャクチャだと思う反面、ここまではっきり言い切られたら、そりゃもう何も言い返せませんよ(苦笑)。予想通り、『山田くん』は記録的な不入りとなり、以来高畑監督は『かぐや姫の物語』までの14年間、映画製作から遠ざかるはめになってしまいました。

『火垂るの墓』は、そんな高畑アニメの集大成かと思えるような気迫に満ちており、力の入れ方が尋常ではありません。総作画枚数も、『となりのトトロ』が48743枚だったのに対し、本作では54661枚も使用してよりリアルなキャラクターの動きを実現しました。どうやら高畑監督は宮崎監督に対し、セルの枚数で負けたくないと思っているらしく、その後も『魔女の宅急便』の67317枚に対し、『おもひでぽろぽろ』では73719枚、『紅の豚』の58443枚に対し、『平成狸合戦ぽんぽこ』では82289枚という具合に、常に宮崎監督よりもセル枚数を使い続けていきました。そして『もののけ姫』の135962枚に対し、なんと『となりの山田くん』ではついに15万枚を突破して、全国のアニメファンのド肝を抜いたのです。どんだけ負けず嫌いなんだよwww

このように、当時最高のスタッフを導入し、最高のクオリティを目指して製作された本作ですが、一流アニメーターを全て引き抜かれた宮崎駿は激怒したという。中でも、近藤喜文(『魔女の宅急便』や『もののけ姫』などの作画監督を務め、”宮崎駿の右腕”と称されていたアニメーター)をめぐる二人の争奪戦は有名で、高畑は「他は何もいらないから近ちゃんだけ欲しい!」と熱望し、宮崎は「近ちゃんが入ってくれないなら僕は降板する!」と言い放つなど、お互いに一歩も譲らない壮絶な「アニメーター引き抜き合戦」が繰り広げられました。

米をよそう際、手首に付着した米粒を舐め食べる動作など、高畑アニメが追究する実にリアルな描写の実現は、近藤さんの強く鋭い感受性あって初めて可能だったのです。しかし結局、「宮崎駿は自分で絵が描けるから」という鈴木プロデューサーの判断で、近藤さんは『火垂るの墓』の製作にたずさわることになりました。この時の宮崎監督の怒り様は凄まじく、「もう『トトロ』は作らない!」と駄々をこねて鈴木敏夫プロデューサーを大いに困らせたそうです。大人気ないなあw

更に、この映画はそんな高畑監督の完全主義が災いし、公開日までに作画作業が間に合わず、ついに一部を未完成のままで上映するはめになってしまいました(公開当時、未着色で線画だけのシーンがあったが、多くの観客は”演出”と勘違いしたらしい)。その原因は「徹底したリアリズムと独自のこだわり」にあるという。例えば、映画の中に”パンを食べるシーン”があったとすると、宮崎監督の場合は「そのパンが美味しそうに見えるかどうか?」に注意して演出するのに対し、高畑監督は「そのパンの原材料は何か?どこの国で作られたパンなのか?」という部分にまずこだわり、徹底的に本物を調べ抜くらしい。

当然、『火垂るの墓』でもこの完全主義が貫かれ、スタッフは大迷惑。ある時、空襲シーンをチェックしていた高畑監督は「B29の飛んでくる方向はこれで合っているのか?」ということがどうしても気になってしまいました。そこで、当時の記録を全部調べ上げ、主人公の清太の家から見上げた時、「この日のこの時間、B29は間違いなくこっちから飛んで来た」ということを確認した上で、ようやくOKを出したという(ダメだった場合は全部描き直しになる)。

つまり、この映画に出てくる方位や方向、その他細部に至る設定の数々は、全て高畑監督によって検証し尽くされており、完全に正確なものとなっているのですよ。正直言って「そんなことをいちいち気にする観客なんていないだろ」という感じなのですが、この”こだわり”こそが単なるアニメとは一線を画す驚異的なリアリズムを生み出している要因と言えるのでしょう。

ちなみに、『火垂るの墓』は背景美術のこだわり方も尋常ではなく、なんと土手に生えている草の種類が分かるぐらい、一本一本正確に描き込んであるらしい。それを見た当時のガイナックスのスタッフは「これはもう、テクニック云々の問題じゃなく、俺たちとは人生観そのものが違うんだ・・・」と言うしかなかったそうです。

また、原画スタッフとしてエヴァンゲリオンの庵野秀明が参加している事も今では貴重。「『トトロ』のオープニングと『火垂るの墓』のメカシーンと、どっちをやりたい?」と聞かれて、「じゃあ、『火垂るの墓』をやらせて下さい」と庵野監督が自分で選んだものの、後に激しく後悔するハメに。満艦全飾の軍艦が登場するシーンを担当しましたが、「高畑アニメはやっぱり難しかった。10年早かったですね」とプレッシャーが強すぎてなかなか描けなかったそうです。

しかも、昔の船の資料を大量に集め、一ヶ月かけてディテールを細部までキチンと再現したのに、完成した映画を見たらなんと全部真っ黒に!これには庵野監督もよほど悔しかったらしく、「ラッタルとか、手すりの数まで調べて正確に描き込んだんですよ。可能な限り時代考証を合わせようと苦労したのになあ、チクショー!」と愚痴っていました。ちなみに、艦を黒く塗り潰した犯人は映画監督:樋口真嗣の奥さんです。「“美術監督の指示で仕方なくやった”と彼女は言ってますけど、満艦飾にライトが付いてて真っ黒はないですよねえ」と、いまだに庵野監督は根に持っているらしい(笑)。

また、元々『火垂るの墓』は原作者の野坂昭如も、全然書くつもりが無い話だったそうです。小説やコラムなどの仕事を何本も抱え込んでいた超過密スケジュールの中、担当編集者から毎日のように原稿を催促され、仕方なく喫茶店で適当に書き上げたとか。ちなみに、野坂の孫娘は学校で「火垂るの墓の作者は、どういう気持ちでこの物語を書いたでしょうか?」という問いに対し、「締め切りに追われてヒィヒィ言いながら書いた」と答えたらしいw

野坂自身は書いた瞬間にもう見たくないから編集者に投げつけて、それっきり一回も読まず、それから何十年も経って本人も忘れた頃にアニメ化の話が実現。「まあ、どうせアニメなんて大したモンじゃないだろう」と思って試写会で観たら本人号泣(笑)。泣きながら試写室から飛び出してきたという逸話まで残っています。というわけで、本作は『アルプスの少女ハイジ』から連綿と築き上げてきた高畑勲のリアリティ溢れる演出の、まさに“頂点を極めた”と言っても過言ではない作品なのです。個人的には「アニメを観て、何でこんなに辛い思いをしなきゃならんのか?」という気もしますが、とにかく色んな意味で凄まじい映画であることは間違いないでしょう。


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